小規模宅地等の特例 (概要)
①.小規模宅地の特例についての相続税の課税価額計算の特例(概要)②.老人ホームへ入居していた場合③.二世帯住宅の場合④.駐車場の敷地⑤.対象候補地の有利選択
小規模宅地の特例とは
相続財産の中に自宅や生活の糧となる商売しているお店や賃貸アパートの敷地がある場合に、これらの敷地を他の財産と同じように評価されて相続税が掛けられると遺族の方々の生活に大きな支障が生じてしまう恐れがあります。そこで国は相続又は遺贈により取得した財産のうち、その相続の開始の直前において被相続人等の事業の用に供されていた宅地等又は被相続人等の居住の用に供されていた宅地等のうち、一定の選択をしたもので限度面積までの部分(以下小規模宅地等といいます。)については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、一定の割合を減額する制度を設けています。
ただし、相続開始前3年以内に贈与により取得した宅地等や相続時精算課税に係る贈与により取得した宅地等については、この特例の適用を受けることはできません。
なお、被相続人等とは、被相続人又は被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族をいいます。
特定居住用宅地等とは
相続開始の直前において被相続人等の居住の用に供されていた宅地等で、次の区分に応じ、それぞれに掲げる要件に該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものをいいます。ただしその宅地等が2以上ある場合には、主としてその居住の用に供していた一の宅地等に限ります。
限度面積と減額割合
330㎡まで80%の減額になります。
例えば敷地330㎡の自宅相続税評価が4000万円だったとすると、減額される金額は
4000万円×80%=△3200万円となり、課税される金額は差額800万円となります。
適用できる取得者と取得者毎の要件は取得者毎に次のようになっています。
被相続人の配偶者
配偶者の場合は取得の要件はありません。
被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物に居住していた親族
相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ、その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していることが要件です。
上記1及び2以外の親族
次の要件を全て満たすことが必要です。
・居住制限納税義務者又は非居住制限納税義務者のうち日本国籍を有しない者ではないこと
・被相続人に配偶者がいないこと
・相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた被相続人
の相続人がいないこと
・その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること
・相続開始前3年以内に日本国内にある取得者、取得者の配偶者、取得者の三親等内の親族
又は取得者と特別の関係がある一定の法人が所有する家屋(相続開始の直前において被相
続人の居住の用に供されていた家屋を除きます。)に居住したことがないこと
・相続開始時に、取得者が居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有して
いたことがないこと
※俗に「家なき子特例」といわれているこの部分は近年の改正で適用制限が強化されてい
ますのでご注意ください。
被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等
配偶者
配偶者の場合取得要件による制限はありません。
被相続人と生計を一にしていた親族
相続開始前から相続税の申告期限まで引き続きその家屋に居住し、かつ、その宅地等を相続税の申告期限まで有していることが要件です。
次に被相続人等の事業の用に供されていた宅地等について見ていきます。
被相続人等の事業の用に供されていた宅地等には被相続人の貸付事業の用に供されていた宅地や貸付以外の事業の用に供されていた宅地、さらには同族会社に貸付し、その同族会社が貸付事業や貸付以外の事業の用に供されていた宅地等様々ですので、これらの区分により要件や限度面積、減額割合が決まっています。
1.特定事業用宅地等に該当する宅地等
特定事業用宅地等に該当する宅地等とは、相続開始の直前において被相続人等の貸付事業を除く事業の用に供されていた宅地等で、その宅地等の上で営まれていた被相続人の事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ、その申告期限までその事業を営んでいること、及びその宅地等を相続税の申告期限まで有していることの要件を満たした被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものをいいます。この宅地は、被相続人が個人事業で商売をしていたものになります。
限度面積と減額割合
400㎡まで80%の減額になります。
適用要件
事業承継と保有継続の両方の要件を満たすことが必要です。
・その宅地等の上で営まれていた被相続人の事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、
かつ、その申告期限までその事業を営んでいること。
・その宅地等を相続税の申告期限まで有していること。
2.特定同族会社事業用宅地等
特定同族会社事業用宅地等とは相続開始の直前から相続税の申告期限まで一定の貸付事業を除く法人の事業の用に供されていた宅地等で、相続税の申告期限においてその法人の役員であること及びその宅地等を相続税の申告期限まで有していることの要件を満たした被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものをいいます。
なお、この一定の法人とは、相続開始の直前において被相続人及び被相続人の親族等が法人の発行済株式の総数又は出資の総額の50%超を有している場合におけるその法人をいいます。
限度面積と減額割合
400㎡まで80%の減額になります。
この特定同族会社事業用宅地等と1の特定事業用宅地等との違いは、被相続人が個人として事業を行っていたか、法人の役員であってその法人が事業をやっていて被相続人はその法人に宅地を貸していたかの違いによります。
3.特定同族会社がその宅地を貸付事業の用に供している場合
限度面積と減額割合
200㎡まで50%の減額になります。
同族会社が貸付の用に供している場合には限度額、割合共に貸付事業の制限が入り縮小されます。
相続開始の直前において被相続人等の事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業に限ります)の用に供されていた宅地等で、その宅地等に係る被相続人の貸付事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ、その申告期限までその貸付事業を行っていること及びその宅地等を相続税の申告期限まで有している要件に該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものをいいます。
なお、準事業とは、事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うものをいいます。
限度面積と減額割合
200㎡まで50%の減額になります。
その他
被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の貸付事業の用に供されていた宅地等
限度面積と減額割合
200㎡まで50%の減額になります。
適用要件
事業承継と保有継続の両方の要件を満たすことが必要です。
・その宅地等の上で営まれていた被相続人の事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、
かつ、その申告期限までその事業を営んでいること。
・その宅地等を相続税の申告期限まで有していること。
まとめると次のようになります。
小規模宅地の特例併用の場合の制限
特定居住用宅地等330㎡と特定事業用宅地等400㎡については併用して利用した場合の面積制限はありません。
従って特定居住用で最大330㎡と特定事業用と特定同族会社事業用宅地等は最大400㎡が併用して使えるので、
合計730㎡まで△80%となります。
一方貸付事業用がある場合には、全体で200㎡までの制限があります。
ただし、特定居住用、特定事業用とも元々の限度面積が大きいため、次のように面積を修正して全体の限度面積を算定します。
算式で表すと、
{(特定事業用宅地等)+(特定同族会社事業用宅地等)}×200㎡/400㎡+(特定居住用宅地等)×200㎡/330㎡+{(貸付事業用宅地等)+(生計一親族貸付事業用宅地等)}≦ 200㎡
が限度面積となります。
限度面積を超える場合には、相続人全員の合意により、どの宅地に小規模宅地等の特例を適用してもかまいません。
適用を受けるための手続き
この特例の適用を受けるためには、相続税の申告書に、この特例を受けようとする旨を記載するとともに、小規模宅地等に係る計算の明細書や遺産分割協議書の写しなど一定の書類を添付する必要があります。