民法改正により令和2年4月1日から配偶者居住権が施行されました。
令和2年4月以降の相続の場合で自宅の評価に配偶者居住権を設定することが出来るようになりました。
背景
その背景となったのは平均寿命の伸長に伴い、高齢化の進展により例えば夫を亡くされた配偶者がその後長期間にわたって生活を継続できることの権利を配偶者居住権として確保する必要が出てきたことによります。従来は自宅に住み続けようとした場合に、その自宅の相続税評価額が高いと配偶者がそれ以外の遺産を取得できずその後の生活に支障を来すケースもありました。
施行日以後遺産分割協議により取得したりや遺贈により取得した場合には配偶者はその居住建物の全部について無償で使用及び収益をする権利を取得します。
ただし、被相続人が自宅を配偶子や以外の人と共有していた場合には配偶者居住権は生じません。
配偶者居住権の相続税評価額
配偶者居住権の評価についてはその自宅の土地等及び家屋それぞれについて評価額を算定します。つまり土地と建物は不可分一体のものですから、家屋だけでなく家屋の敷地についても居住権の評価額が発生します。
例えば自宅の土地建物を子が取得した場合では、下記のように土地、家屋ともにそれぞれの所有権と居住権がありその合計額が相続税評価額となります。
建物の配偶者居住権の評価
建物の相続税評価額-配偶者居住権が設定された所有権の価額(※)
(※)
- 耐用年数 : 法定耐用年数の1.5倍の年数を使い、建物の築年数を控除
- 平均余命 : 厚生労働省が発表している完全生命表による年数
- 複利原価率 : 国税庁のホームページに掲載されています。
例えば
配偶者 :妻 75歳
自宅築年数 :10年
建物固定資産評価額:800万円
建物の耐用年数 :22年 ・・・×1.5倍=33年
平均余命 :15年
複利原価率 :0.642のケースであれば、
800万円×(33-10-15)÷(33-10)×0.642=176.6万円・・・家屋所有権の評価額
800万円-176.6万円=623.4万円・・・・・・・・・・・・・・家屋居住権の評価額
土地等の配偶者居住権の評価
配偶者居住権の設定された敷地の評価は次の通りです。
土地等の相続税評価額×法定利率による複利原価率
土地の相続税評価額: 2000万円
法定複利原価率:0.642
配偶者居住権の設定期間:終身 とすると
2000×0.642=1284万円・・・・土地等の所有権の評価額
2000万円-1284万円=716万円・・土地等の配偶者居住権評価額
配偶者居住権を第三者に対抗するためには設定登記をする必要があります。
登録免許税は居住建物の評価額×2/1000です。
配偶者居住権の消滅
次の場合には配偶者居住権は消滅します。
- 配偶者が死亡した時
- その居住用家屋の全部が消滅した時
- 遺贈・遺産分割の審判により期間を定めている場合で、その期間が満了した時
- 用法違反によりその居住用建物の所有者が消滅の意思を示した時