退職金編

退職金

 

退職手当等

 

被相続人の死亡によって、被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与を受け取る場合、相続財産とみなされて相続税の課税対象となります。

なお、死亡退職で支給される金額が被相続人の死亡後3年以内に確定したものや生前に退職していて、支給される金額が被相続人の死亡後3年以内に確定したものも含みます。

 

非課税枠

 

相続人が受け取った退職手当金等は遺族の生活の糧となること等を考慮して非課税枠が設けられています。

非課税限度額は次の式により計算した額です。

 

500万円 × 法定相続人の数 ㊟= 非課税限度額

 

全ての相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人は含まれません。)が取得した退職手当金等を合計した額が、非課税限度額以下のときは課税されません。
相続人以外の人が取得した退職手当金等には、非課税の適用はありません。

 

㊟・法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。

・法定相続人の中に養子がいる場合の法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までとなります。

 

各人に課税される退職手当金等の額

 

全ての相続人が受け取った退職手当金等を合計した額が非課税限度額を超えるときの超える部分の金額と相続人以外の者が受け取った退職手当金等の金額が相続税の課税対象になります。

相続人が受け取った退職手当金等のうち課税される退職手当金等の金額は次の算式により計算します。

 

誰が受取るものなのか

 

多くの大手企業では給与規定を定めていますが、退職金の受取について労働基準法に則った規定になっています。この労働基準法42条には「遺族補償を受けるべき者は、労働者の配偶者(婚姻の届出をしなくとも事実上婚姻と同様の関係にある者を含む。以下同じ。)とする。配偶者がない場合には、遺族補償を受けるべき者は、労働者の子、父母孫及び祖父母で、労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた者又は労働者の死亡当時これと生計を一にしていた者とし、その順位は、前段に掲げる順序による。(後略)」となっています。

具体的には次のように定められています。

 

  • 退職給与規程等の定めによりその支給を受ける者が
  • 具体的に定められている場合  

 

その退職給与規程等により支給を受けることとなる者

 

  • 退職給与規程等により支給を受ける者が具体的に定められていない場合又は被相続人が退職給与規程等の適用を受けない者である場合

 

イ 相続税の申告書を提出する時までにその被相続人に係る退職手当金等を現実に取得

した者があるとき・・その取得した者

ロ 相続人全員の協議によりその被相続人に係る退職手当金等の支給を受ける者を定め

たとき・・その定められた者

ハ イ及びロ以外のとき・・その被相続人に係る相続人の全員

(この場合、各相続人は、死亡退職金を、法定相続分ではなく均等に取得したものとします)

 

従って会社の給与規定に示されていれば、遺産分割の対象ではなく、上記の順により遺族が取得することになります。

中小企業や同族会社の場合、会社に給与規定等があるかどうか確認が必要です。

 

弔慰金

 

被相続人の死亡によって受ける弔慰金や花輪代、葬祭料、香典などのうち、社会通念上相当とされる金額については相続税の対象にはなりません。

 

ただし被相続人の雇用主などから弔慰金などの名目で受け取った金銭などのうち、実質上退職手当金等に該当すると認められる部分は相続税の対象になりますので注意が必要です。

 

次に掲げる金額を弔慰金等に相当する金額とし、その金額を超える部分に相当する金額は退職手当金等として相続税の対象

となります。

 

(1) 被相続人の死亡が業務上の死亡であるとき

被相続人の死亡当時の普通給与の3年分に相当する額

 

(2) 被相続人の死亡が業務上の死亡でないとき

被相続人の死亡当時の普通給与の半年分に相当する額

 

普通給与とは、俸給、給料、賃金、扶養手当、勤務地手当、特殊勤務地手当などの合計額をいいます。

例えば、被相続人の月額給与が50万円、業務以外の死亡で、弔慰金が500万円出た場合には、

500万円-50万円×6ヶ月=200万円が退職手当金等として相続税の対象となります。

 

退職金と弔慰金を両方貰っている場合

 

退職金と弔慰金を両方貰っている場合は、最終月額給与の6ヶ月分(業務上死亡の場合は3年分)を控除した残額を他の退職手当金等に合算してから、退職金の非課税を控除することとなります。

上記の例ですと、200万円が他の退職金と合算されて、相続財産として算定されますので、

他の退職手当金等が仮に2000万円

法定相続人3人であれば

700万円が相続税の対象として算定されます。

(2000万円+200万円)-500万円×3人=700万円

 

 

現役の給与所得者が亡くなったときに受取る退職金

 

 

現役の給与所得者が、亡くなった場合には、勤務先からの死亡退職金のほかに複数の退職手当金等を受取ることがあります。被相続人に支払われるべきであった退職手当金、功労金その他これらに類する給与で被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものの支給を受けた場合は非課税枠の適用がありますが、それ以外にも各種法令により次の退職手当金等は非課税枠が適用できる旨定められています。

 

 

 

 

 

 

 

 

確定拠出企業年金

 

確定拠出企業年金は老後の生活資金を準備する目的に給与の一部を積み立てるものであるため、60歳まで受け取れない制度設計になっています。在職中に確定拠出企業年金の掛金を掛けていて、その年金を受取る前に死亡した場合には、その遺族が運用機関へ死亡退職金の裁定請求をすることによって死亡退職金として、受取ることができます。この一時金は退職金扱いですので、死亡退職金の非課税枠の対象になります。従って500万円×法定相続人を超えた部分が課税の対象となります。

受取人の優先順位は、民法の法定相続人の順位と少し異なります。
第1順位配偶者第2順位は死亡した者の収入で生計を維持していた子⇒父母⇒孫⇒祖父母⇒兄弟姉妹第3順位は2順位以外の子⇒父母⇒孫⇒祖父母⇒兄弟姉妹⇒印の左側の相続人が優先。同順位、例えば第2順位の子が2人いた場合には、企業との契約上代表する1人の相続人に支払うこととなりますので、代表でどちらかが受取った上で、各人に割り振ることとなります。

このような受取順位どおりではなく、自分が決めた人に受け取ってもらいたい場合には、「死亡一時金」を受け取る人をあらかじめ指定しておくことができます。事前に申し出て手続きしておくことが必要です。

 

 小規模企業共済等の掛金を掛けている方が亡くなった場合

 

個人で事業を営んでいる場合には、勤務先からの退職金がないため、独立行政法人中小企業基盤機構が積立金を預かって運用し、事業を廃業したとき、亡くなったときにこの共済金を退職金として受取ることが出来ます。死亡で遺族が受取る場合には、みなし相続財産として退職金の非課税枠が使えますので、500万円×法定相続人を超えた部分が課税の対象となります。
掛金は年間84万円が上限ですが、毎年の確定申告で全額経費扱いとすることができますので、所得から控除しながら将来の退職金の積み立てができます。個人事業主の節税商品として、また万一の納税資金確保する手段として大変有効です。

未加入の自営業者や中小企業オーナーは検討すべき事項のひとつでしょう。死亡の場合の受取順位は、配偶者⇒子以下⇒父母⇒孫⇒祖父母・・の順と規定されており、子以下の方については共済者が亡くなった当時、主として共済契約者の収入によって生計を維持していた方が優先となります。

 

死亡退職金を年金方式で受取った場合 

 

会社から支給される死亡退職金を一時金ではなく、年金方式で受取ることを選択する場合の相続税の課税はどのようになるでしょうか。

既に年金方式で退職金の支給を受けている方が受給されている最中に亡くなられた場合で、亡くなられた時期が、その年金支払い保証期間中であるため遺族が残りの期間の年金を受取ることとなる時も同様です。この場合には年金受給権を相続または遺贈により取得したものとみなされて相続税の課税対象となります。年金受給権が相続

税の課税対象となるときの価額の評価は、相続税法24条の規定により、解約返戻金相当額などにより評価します。

 

国民年金や厚生年金の遺族年金

 

国民年金や厚生年金を受給していた方が死亡したことにより、遺族が遺族年金を受給する場合(恩給を受けていた場合は遺族恩給)には、原則として所得税も相続税もかかりません。所得税も相続税も課税されない遺族年金の種類については、国民年金法、厚生年金保険法、恩給法、国家(地方)公務員共済組合法、私立学校教職員法などの法

律で規定されたものになります。

 

確定給付企業年金法などに基づく遺族年金

 

確定給付企業年金法の規約に基づいて支給される年金、特定退職金共済団体が行う退職金共済の制度に基づく年金(所得税法施行令73条第1項に規定するもの)適格退職年金契約に基づき支給を受ける退職年金は、相続税の対象にはなりますが、毎年受取る年金には所得税がかかりません。

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